キタガワのブログ

島根県在住のフリーライター。ロッキン、Real Sound、KAI-YOU.net、uzurea.netなどに寄稿。ご依頼はプロフィール欄『このブログについて』よりお願い致します。

ライブレポート フレデリック『フレデリズムツアー2017~ぼくらのTOGENKYO~』@広島クラブクアトロ

犬をネコっぽくする。
ポメラニャン。

 

 

 

 

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12月3日、フレデリック『フレデリズムツアー2017~ぼくらのTOGENKYO~』の広島公演に参加した。今回はその模様をレポートする。

フレデリックが広島でライブをするたびに、毎回三原健司(Vo.Gt)は言っていた。

絶対にクアトロでワンマンライブをする」と。

そして今回のツアー広島編。悲願の初クアトロワンマンとなったわけだが、結果チケットは完全ソールドアウト。それも機材を可能な限り撤去し、出来るだけ多くの人が入れるようにと配慮したにも関わらず、だ。

かねてより広島でのライブを拝見していた身としては、グッとくるものがあった。

会場に入ると、物凄い人だかりにまず驚かされる。ファーストミニアルバム『うちゅうにむちゅう』のTシャツを着ている人もいるし、はたまた「なんの曲やるかな」なんて話で盛り上がっている人もいる。

男女比はほぼ半々。やはりというべきか、若者が大半を占めている。

ステージに目を向けると、三原康司(Ba)がデザインしたであろう『TOGENKYO』のイラストが掛けられている。

18時、定刻ちょうどに暗転。おどろおどろしいSEが流れ始める。以前のSEは『パパマーチ』だったり『リリリピート』だったりと千変万化していたが、ツアー用にまた変えたようだ。緊張感が会場を包み込む。

フレデリック、始めます」という声と共に、メンバーが登場。いつになく笑顔な赤頭隆児(Gt)を筆頭に、この日が広島初ライブとなる新メンバー、高橋武(Dr)、康司、健司と続いていく。


メンバーが楽器を持ち、ノーモーションで投下された1曲目は、なんと『オンリーワンダー』。『それ』を観客が理解した瞬間、大爆発が起きた。

ライブ後半、もしくはラストに持ってくることの多かったこの曲を冒頭に披露する、というのは、観客一同全く予想していなかっただろう。

興奮のあまり、熱唱……というか絶叫する人、PVのダンスを踊る人も見受けられた。

僕はといえば、終始爆笑していた気がする。人間、本当に楽しいと爆笑するんだなと思った。

ちなみに一緒に行った友人は、あまりの激しさにカバンの中身をぶちまけたらしい。それほどの盛り上がりだったと言うべきか。

その後も間髪入れずに『KITAKU BEATS』、『オワラセナイト』、『愛の迷惑』と、アップテンポな楽曲を畳み掛けていく。観客はこの時点で、1音目が鳴った瞬間に我を失って跳び跳ねるマシーンに調教されていたように思う。

健二は時折歌詞を変えながら、ユーモアたっぷりに歌い上げていた。中でも『KITAKU BEATS』の「遊びきってから……帰れよ!」と歌詞を変えて歌う健二の粋な計らいには、ゾクッとなった。

ところで、今回のライブで驚いた点が2つある。まず1つは、MCがほとんどなかったこと。最初のMCはライブ開始から30分も経過した頃だったし、歴代のライブで最もMCが少なかったと思う。これには何度もライブを見ている人も驚いたことだろう。

そして2つ目は、メンバーの集中力だ。前述したように、MCを削ぎ落とす変わりに多くの曲を演奏するのが今回のツアーだったわけだが、恐ろしいほどの集中力なのである。曲と曲との間はほぼなし。ボーカルの健二は水を飲むこともせず、楽器隊は「チューニングの時間も惜しい!」とばかりに間髪入れず演奏、演奏、演奏。『息つく暇ない』という表現がピッタリの、ヒリヒリした緊張感。圧巻のパフォーマンスが続いていく。

続く『うわさのケムリの女の子』ではステージにスモークが焚かれ、メンバーの姿が完全に見えなくなるも、量があまりにも多すぎたためか、次曲の最後までスモークが残り続けるハプニングが発生。赤頭がそれを見て笑いを堪えているのが印象的だった。

各シングルのカップリングを演奏し終え、「楽しんでますか?」と問いかける。ちなみに、この日初のMCである。

「メンバーが増えたんですよ」ということで、改めてメンバー紹介をすることに。

まず、ボーカルの健二から。今回広島クラブクアトロでライブをすることの意気込みを語る。「いずれはグリーンアリーナ(広島唯一のアリーナ)でライブをしたいと思います」という熱いセリフの後に「毛先緑にしたんですよ、グリーンアリーナだけに」。言いつつ、茶目っ気たっぷりに自身の髪を見せる。反則です。

続いて、ベース康司。「やっぱ広島好っきゃわー」と感慨深げだが、その独特の喋り方に会場は笑いに包まれる。「ワンマンやから、全員俺らだけを見に来てくれてんやもんな。……俺の広島やな」の発言には、笑いが溢れる。最後には「どうも、広島の三原康司でした」と、オチも忘れない。

赤頭は、広島=カープということで、名前にかけて自身を「赤ヘル」と命名。

そして今回が初の広島ライブであるという高橋は、以前のクアトロツアーに広島クラブクアトロの名前がなかったことに触れ、「えっ?ここってクアトロやんな?」と笑いを誘う。

「前来れなかった分、最高のライブをするぞ!」とのことで、ここからは怒濤の後半戦に突入する。

個人的には、この時点で「もう1時間半くらいやったんじゃないか?」と錯覚していたのだが、まだセットリストの半分しかやっていなかったのだ。

たしかにアルバム『TOGENKYO』の曲はまだ余っているし、まだやっていない代表曲も多く残っている。だがそれを補って余りあるほどの熱量、緊張感のおかげで、体感時間が完全に麻痺していた。おそらく、会場にいた全てのファンが感じていたことだろう。

後半戦は代表曲と『TOGENKYO』の楽曲が入り交じる、理想的なセットリストが組まれていた。まずは『ナイトステップ』からスタート。双子のコーラスが映える、ミドルテンポなナンバーだ。

『ディスコプール』では、フレデリックのライブではおなじみ、歌詞を「広島のプールサイドは」に変えて披露。怒号にも似た歓声が上がる。

アルバム『TOGENKYO』の楽曲も、まるでライブの定番曲のように観客に受け入れられているのが印象的だった。通常、ライブでは新譜を聴いていない人がポカーンとなりそうなものだが、本当に全曲で同様の盛り上がりを見せていた。これは凄いことだと思う。

そして『オドループ』が投下されたときの大爆発は、忘れることができない。リフが鳴り響いた瞬間、観客が自然に全員、1歩2歩と前に出る。必然的にぎゅうぎゅうのダンスフロアが出来上がり、おなじみ「踊ってない夜を知らない」のサビでは、待ってましたとばかりに大合唱が起こる。「歌えますかー!?」と、ボーカルの健二は歌を完全に放棄し、マイクから離れて観客にサビを歌わせていた。「踊ってる広島気に入らないよ」のセリフもバッチリハマる。最高だ。

そして、ついに最後の曲へ。曲の前には「もう発表されてるけど、地元の神戸ワールド記念ホールでのワンマンが決まりました」と健二が語る。今回のツアーは、いわば『ワールド記念ホールに全力で挑む意思表示』的なものであると明かされた。

ラストの曲は『TOGENKYO』。「悲しくたってそんな顔見せずに笑って過ごしてんだ」という前向きなメッセージは、確実に観客に伝わっていたと思う。その証拠に、比較的新しい曲でありながらも『オンリーワンダー』、『オドループ』と同じレベルの盛り上がりを見せていた。桃源郷は理想の場所、という意味であるが、まさにフレデリックは『そこ』を目指していることが、はっきりとうかがい知れた。

「ありがとうございました!」と語り、ステージを降りるメンバー。観客からは割れんばかりのアンコールを求める手拍子が鳴る。ふと手元の時計を見ると、針は19時ちょっと過ぎを指していた。え?まだこんな時間?と驚いていると、メンバーが再登場。

アルコール1発目はアルバム『OTOTUNE』から、『FUTURE ICE CREAM』。『トウメイニンゲン』でも『ハローグッバイ』でもなく、現代と未来へのメッセージ性が強い同曲を披露したのは、フレデリックの決意の表れだろうか。

僕らはみんなの思いを全部背負って、神戸ワールド記念ホールに立ちます。みなさんの力が必要です」と健二は語る。「そんな決意が全部詰まってる曲です」と披露された正真正銘最後の曲は、『たりないeye』だった。

健二はビブラートを多用しながら「流線型の涙の中に僕らの景色が映った」、「優先席の瞳の中にもっと ずっと」と歌っていた。まるで一言一言を噛み締めるかのように。それを見て、漠然と「フレデリックはもっとでっかくなるんだろうな」と思った。神戸ワールド記念ホールだけではない。もっともっと先。彼らが見据え、ゴールだと捉えているのは、まさに桃源郷なのだと感じた。

最後には健二いわく「高いカメラ」で記念撮影。みんないい笑顔。ここまでの経過時間は僅か1時間40分。フレデリック史上最速タイムだった。だが、そんなことを全く感じさせないほど、お腹いっぱいになった。証拠に、下のセットリストを見てほしい。この短時間に何曲やってるんだこいつら……。


僕が今回のツアーで実感したのは、彼ら自身が底無しの成長を続けていることだった。矢継ぎ早に演奏するというかつてない試みをはじめ、曲と曲との繋ぎや、細かな部分まで配慮した磐石のセットリスト。まだまだ化けるぞ、フレデリック。

あとは、お客さんとの距離が近いこと。これは体感的なことではなく、なんというか、フレンドリーなのである。良い意味で『何をしても大丈夫』という信頼感が、フレデリックとお客さんの間に築かれていた印象を受けた。

これからも彼らの活躍から目が離せない。神戸ワールド記念ホール、行こうかな……。

 

【フレデリック@広島 セトリ】
オンリーワンダー
KITAKU BEATS
オワラセナイト
愛の迷惑
うわさのケムリの女の子
ミッドナイトグライダー
まちがいさがしの国
みつめるみつあみ
ナイトステップ
スローリーダンス
ディスコプール
パラレルロール
かなしいうれしい
シンクロック
リリリピート
オドループ
TOGENKYO

[アンコール]
FUTURE ICE CREAM
たりないeye