ここで浜崎がステージに現れ、次の楽曲の準備へ。そこで話されたのは岸田の車トークだ。どうやら岸田は出演陣のうち、最も早く2日前に島根に到着。車をレンタルして銭湯など様々な場所へ遊びに行ったのだそう。ただ実は岸田は少し前に、車の免許を人生で初めて取ったばかり。すると浜崎は「そう言えば免許センターで身バレしたんだって?」と語り、岸田が「そうなんすよ。最初は何もなかったんですけど、だんだん『くるりの岸田繁が免許取りに来てる!』と噂になりまして。僕の担当してくれてるドライバーの先生がいきなり優しくなりました。逆に厳しくなる人もおったんですけど、くるりのアンチだったんちゃうかな」と爆笑を掻っ攫っていく。ちなみに最後の楽曲は浜崎のリクエストで、こちらもレアな“Baby I Love You”。最後までしっとりと歌い上げた岸田は、余裕綽々でステージを降りていったのだった。
開演は入場に思ったより時間がかかり、当初の予定から15分ほど遅れてスタート。なお1番手は海外の活躍も凄まじいCrossfaithで、個人的には今回のツアーの対バンとして最も驚いたのが彼らでもあった。というのも、Crossfaithと言えば単独でもソールドアウト間違い無しのデジタルロック立役者であり、彼らが東京ならまだしもこんな田舎の(地元民なので御愛嬌)小さなライブハウスに来てくれるとは、夢にも思っていなかったから。その期待に答えてか、SEの“Deus Ex Maciina”が鳴った瞬間に至るところから怒号にも似た歓声。更には背後からズガンと前に押し出されたことで、一瞬意識が遠のく盛り上がりを記録。思えばこの時点で、もうじき来るカオスは確約されていた訳である。
以降もモッシュ&ダイブのみならずウォールオブデスをも要求する超加熱なステージに翻弄される我々。「地獄行き!」と絶叫して放たれた“Countdown To Hell”、ダブステップ的な電子音が炸裂する“Wildfire”など、多方向からこちらを容赦なくぶん殴ってくるような楽曲のオンパレードだ。中でも新曲として披露された“ZERO”はこれまでのCrossfaithをごった煮したようなサウンドが素晴らしく、音源では知り得なかった楽曲中の緩急や、グロウルさえも駆使するKoieのボーカルセンスにも気付かされる一幕だった。後半では上半身裸になったTeruの挙動もどんどん激しくなり、ほぼダブルボーカル状態になったり客席にダイブしたりとやりたい放題。もちろんそれを観る我々はまた興奮しっぱなし……という、見事な循環だ。
そう言えば、と会場に向かう途中ふと考える。何故なら10-FEETやヤバTなどライブハウスを主戦場とするバンドは数あれど、本来そこに常に名前が挙がるはずのDragon Ashの全国ツアーは、随分久方ぶりの参加のように思えたからである。実際それは事実で、ロングランなツアーはなんと4年ぶり。また今回『LIVE HOUSE TOUR ”VOX in DA BOX”』とタイトルが付けられた理由も、Dragon AshのホームであるライブハウスでVOX(ラテン語で声)を響かせて欲しいという意味を込めた意義深いものであると知り、妙に納得した次第である。
Dragon Ashの単独は、基本的にシームレス。ゆえにこの日も水分補給やチューニングはほぼなしで突っ走った形で、以降も“House of Velocity”や“Fly Over feat. T$UYO$HI”といった楽曲でヘドバンの嵐を作り出していくDAである。かと思えば要所要所に“Ode to Joy”や“光りの街”といったグッと来る楽曲を挟み込むので油断出来ないのもニクい。前半で特に感動的だったのは昨年リリースの“VOX”で、幾度もファンにレスポンスを委ねた後に歌われる《その声こそ 僕らが音を鳴らす理由自体なんだ》とする一幕は、我々だけではなく彼らもライブに賭けているリアルを強く感じさせてくれた。
暗転した会場に“Viva la revolution”のイントロをファンが「ビラ!ビラ!」→「ラレボリューション!」で歌い継ぐ形で再び呼び込まれたアンコール。ここではまず今ツアーで恒例となった写真撮影を挟みつつ、メンバーそれぞれのコメントで時間をつなぐDAである。なお地元民からしてもこの場所は地理的にもなかなかバンドがツアーで訪れない場所だけれど、気付けばステージ上にはファンの汗が上って霧になっている。如何にこの日集まったファンの熱量が高かったのかを物語っているように見えた。
DAのアンコールは基本的には決められておらず、その時々の雰囲気で大きく変化することでも知られる。この日のアンコールで最初に演奏されたのは極めて珍しい“Walk with Dreams”で、ミドルテンポなサウンドにゆらゆら揺れる会場だ。そして最後に披露されたのは“運命共同体”!船乗りと船がニコイチの信頼関係で繋がっている……という話はその仕事をしている人にとっては広く知られているが、この楽曲では航海を日々の生活と照らし合わせ、自身の心を再度向き合わせる楽曲として描かれている。Kjはハンドマイクで客席を扇動するように動きつつ、楽曲の後半では「最後は踊って終わろうぜ!」と叫んでモッシュを生み出しており、この“運命共同体”はライブハウスとDA、また音楽と我々ファンを照らしているようにも思えた次第だ。
【Dragon Ash@米子 セットリスト】 Entertain House of Velocity Fly Over feat. T$UYO$HI Ode to Joy VOX 光りの街 ROCKET DIVE(hide with Spread Beaverカバー) The Show Must Go On 朝凪Revival Neverland 陽はまたのぼりくりかえす ECONOMY CLASS 百合の咲く場所で Fantasista New Era A Hundred Emotions
ライブ活動を続けているとともすればセットリストが偏ってしまいがちな感もあるが、今回の夜ダンはここ数年でも非常にレア、具体的にはセットリストの大半をミドルチューン、もしくは比較的新しい楽曲に変化させた前傾姿勢のものに。「皆さん踊る準備は出来てますか?」との一言から始まった“Oh Love”、インディーズ時代のファーストにおける“Fun Fun Fun”など、この40分の持ち時間にあえて強気の姿勢で攻める形は好感が持てたし、実際『今が最高!』を具現化する彼ららしいステージングだったように思う。
「後輩のヤバTに捧げます」と鳴らされた“Magical Feelin'”を終え、最後の楽曲は“WHERE?”。米田は「行くぞ広島!」と何度も煽りつつ、BPMの速いファストロックを叩き付けていく。我々はと言えば何も考えず踊り狂う、最高のロック空間が出来上がっていたのは印象深い。“fuckin' so tired”や“審美眼”といった代表曲を廃して、彼らなりの覚悟で臨んだ40分間。個人的には最後に広島で彼らのライブを観たのは今から7年半前、主催者に直接DMを送って行く小さな会場が最後だったのだけれど、あれから何倍もパワーアップしているなとしみじみ。今度は単独で。
【夜の本気ダンス@広島 セットリスト】 ロシアのビッグマフ(SE) Crazy Dancer By My Side Oh Love Fun Fun Fun ピラミッドダンス feat.ケンモチヒデフミ Magical Feelin' GIVE&TAKE WHERE?
▲2024.01.20 広島BLUE LIVE M1. Crazy Dancer M2. By My Side M3. Oh Love M4. Fun Fun Fun M5. ピラミッドダンス M6. Magical Feelin' M7. GIVE&TAKE M8. WHERE?
『ネッキーとあそぼう わんぱく☆パラダイス』のOPである“はじまるよ”に乗せてステージに現れたのはこやまたくや(Vo.G)、しばたありぼぼ(B.Vo)、もりもりもと(Dr.Cho)の3名。人があまりに密集し過ぎて、メンバーは頭のてっぺん程しか見えないが「そこにいるんだろうな……」というのは明確に分かる盛り上がり。そこから鳴らされたのは“Universal Serial Bus”、“ダックスフンドにシンパシー”の超ファストチューン2連発で、一気に熱量を高めるばかりか、早くもこの段階でダイバーも出現。ライブ定番曲でもないのに、この盛り上がりは一体何だろうか。
ライブはラストスパートで、ここからは“Blooming the Tank-top”、“Tank-top Festival 2019”、“ヤバみ”というラウドな楽曲を立て続けに展開。もうここまで来ると体温上昇も著しいレベルになっていて、一緒に歌って踊って汗をかいている間に楽曲が終わって、また続いて……という覚醒状態に。正直僕はこの時点でほぼ記憶がなかったりするのだけれど、それは彼らの後半にかけての畳み掛けが『楽しい!』の感情のみで全て完結するものであった証左なのだろうと思う。これは最大級の褒め言葉としてだが、本当に「俺死ぬんじゃないかこれ……」と思うレベルの盛り上がり。こやまは「前に来たときはまだコロナ禍で、客席にスペースがあった。でも今日はグッチャグチャになってる。これがヤバTのライブや!楽しいなあ!」と叫んでいたが、これこそがヤバTが望み続けていたライブなのだ。
“Tank-top in your heart”からの写真撮影を終えると、再びファンに挙手制で語り掛けるこやま。「今日ヤバT初めて観たよって人?楽しかった人?もし良かったら他の友達とか、是非ライブに連れてきてください。絶対に良いライブします!」……。思えばこれまで彼らは、特にコロナ禍ではライブハウスの未来を考えて活動していた。制限のある状況下でもライブを続けてソールドアウトさせることで、ライブハウスの存続に繫げるというものだ。しかしシーンが元通りになった今、彼の原動力となっているのは『ライブハウスから離れてしまった人たちをカムバックさせること』。そのためには楽しいライブをして、どんどん広めて行こうというのが今のヤバTの考えである。先程の動画投稿OKの措置についても、それが大きな理由だと思うのだ。
【ヤバイTシャツ屋さん@広島 セットリスト】 Universal Serial Bus ダックスフンドにシンパシー KOKYAKU満足度1位 BEST ハッピーウェディング前ソング 反吐でる ZORORI ROCK!!! ちらばれ! サマーピーポー dabscription 喜志駅周辺のCrazy Dancer(夜の本気ダンスカバー) NO MONEY DANCE DANCE ON TANSU D.A.N.C.E.(ROTTENGRAFFTYカバー) どすえ 〜おこしやす京都〜 Blooming the Tank-top Tank-top Festival 2019 ヤバみ かわE
[アンコール] 無線LANばり便利 Tank-top in your heart あつまれ! パーティーピーポー